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令和6年度景観賞
令和6年度 景観賞
令和6年度は「景観賞」に相当する物件はございませんでした。応募物件の内、各受賞物件は以下のとおりです。
優秀賞

まちづくり活動部門 「to VILLAGE」 下呂市萩原町上村
活動代表者
有限会社二村建築 二村 智亮
選考理由
シャープな都会的デザインで、一見下呂市の景観計画で規定している建物デザインとの違和感を感じさせるが、本件が「まちづくり活動部門」での応募という点が評価のポイントであろう。人口減少が進む中、若年層の流出防止および移住促進を考える時、田舎住まいの在り方も様々に模索する必要があるとの思いから、あえてこうした外観をとっているとのこと。 また、外観や外構のデザインが、周囲の田園景観との調和を図る工夫が随所にみられる。これからの下呂市の景観形成を考える上での一つのヒントを提示する物件といえよう。
審査員特別賞

建築物部門 「(株)木楽建築の工場兼事務所」 下呂市萩原町山之口
建築主
株式会社木楽建築 中丸 公博
設計者
同上
施工者
同上
選考理由
伝統的建築の多い山間地に、地域のデザインモチーフとは異なる物件であるため、評価の分かれるところでもある。ただ、地域産木材を多用し、伝統的林業地での建築の在り方について一石を投ずる点は高く評価できる。本件は、今後、こうした建築者の意欲と伝統的デザインの融合を図っていくことで、近未来の山村景観を創造していく一歩になればとの審査員の思いを提示する賞である。

まちづくり活動部門 「おんまか山念仏岩 維持・管理活動」 下呂市少ヶ野
活動代表者
おんまか山保存会 今井 強
選考理由
江戸時代から続く「おんまか山念仏岩」を守る活動は、地域の人々によって連綿と続けられ今に至っている。地域の心のよりどころであると同時に、ホッとする場所として整備し続けられてきた。地域の伝統的な景観の多くは、こうした地道な活動によって形成されてきたものと言え、そうした面で、本活動は高く評価されるべきものと思う。
ただ、観光の中心軸からやや外れた場所ということもあり、知られざる場所といった面も否めない。しかしながら、今後の地域の景観形成の方向とその手法を世に問うためにも、この機会に「賞」という形で光を当てるべきとの審査員の思いから表彰対象として選考した。
サイン・工作物部門 「天領酒造(株)店頭行灯看板」 下呂市萩原町萩原
築造主
上野田 隆平
設計者
吉本 拓也
施工者
コイケ看板株式会社
選考理由
一見すると、よく言えば昭和の香り漂う、そうでなければ何の変哲もないサインである。しかしさにあらず、この看板は、景観推進地区の登録有形文化財の建築に寄り添う店舗の看板として、あえて目立ないよう、設置位置も敷地内に一歩引いた形にするなど、工夫が評価できる。さらに注目すべきは、最上部に設置された雨避けのアクリル板である。これにより雨水に混入する埃の汚れ付着が軽減でき,良好な状態が持続するのではないかと考えられる。こうした目立たない部分に対する積極的な注力が良好な景観形成の大きな力となることを多くの方々に提示したいと考えた。
総評
しかしながら、「下呂市景観賞」の性質は、下呂市の景観形成をリードする物件の表彰ということだけでなく、市民のみなさんの景観への意識を醸成し、一人一人が景観づくりに参画する機運を高めるという視点も強くあると考えています。そうした視点で「この物件は、景観づくりに向けてキラッと輝くヒントを見いだせるのではないか?」という物件に、審査員特別賞という形で賞することとしました。
ここで改めて今年の景観賞を振り返ると、受賞物件が少なかったことを忘れてはならないと考えています。景観賞の性質上、応募された物件のみが審査対象となるため、今回ノミネートされなかった物件もあったのではないかと推察されます。言い換えれば、応募物件が山ほど来て、事務局や審査員が音を上げるような状態を作っていくことが、下呂市の景観づくりに重要との視点を改めて認識し、市民のみなさんと進んでいければと考えているところです。
下呂市景観審議会 会長 伊藤 栄一