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御嶽山 ~日本列島の植生の縮図~

15 陸の豊かさも守ろう
記事ID:0038927 更新日:2026年6月22日更新 印刷ページ表示
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御嶽山全容図
御嶽山国定公園ロゴ

植生の垂直分布

御嶽山は日本列島のほぼ真ん中に位置しており、山麓から山頂までの標高差が約2,500mもあるため、比較的温暖な気候から北極に近い寒帯のツンドラ気候まで、高さによってさまざまな気候にわかれています。
植物の生態が標高に応じて異なることを「垂直分布」といい、御嶽山は日本中部から北極圏までの自然を凝縮した山です。
植生の垂直分布

木曽五木

御嶽山周辺の気候は、温帯性の針葉樹の生育に適しており、昔から良質な木材の生産地でした。
江戸時代に木曽を治めた尾張藩は、ヒノキ、サワラ、コウヤマキ、アスナロ、ネズコの五種の樹木を「木曽五木」として手厚く保護しました。
また、天領であった飛騨地方の山林は、幕府が管理しました。

巌立溶岩台地(原八丁)の二次林(標高800m)

巌立は約5万4千年前に噴火した摩利支天火山の溶岩流が15~17km も流れて固まったものです。その後、長い時間をかけて濁河川と椹谷が溶岩台地を侵食し、高さ70mの大岩壁をつくりました。
巌立の岩壁の上は原八丁と呼ばれる台地です。溶岩は熱いときには溶けて流れるので、でこぼこに穴が開いたりしても、ほぼ平原になっています。

そこに植物が生え、ブナ林になり、麓の人々に炭焼きに利用されるコナラの雑木林(二次林)や、田畑の肥料として利用される草地になりました。ブナ林や雑木林は5万年分の落ち葉を堆積させ、溶岩台地はふかふかの地面になっています。
原八丁の御嶽山旧登山道をたどると、希少な湿原植物が群生するどんびき平(中崎湿原)の高層湿原があり、どんびき(ヒキガエル)が繁殖期に集まることに由来します。
原八丁

濁河温泉の亜高山帯の森(標高1,800m)

御嶽山の標高1,500~2,400mには亜高山帯の針葉樹の森が広がっています。
地球全体が寒冷化した氷河期に、北から寒帯の植物や動物が生息を広げ、地球が温暖化すると標高が高い山に逃げ込んで生き残りました。
巨大な針葉樹ではシラビソ、オオシラビソ、トウヒ、コメツガなど、北海道の森や、タイガと呼ばれるシベリアやカナダの森林と同じ風景が見られる場所です。

また、御嶽山は火山なので、御嶽山の登山道を進む地面はゴツゴツした溶岩の塊で覆われています。
噴火直後には、岩には植物が生えませんが、御嶽山にたくさん降る雨がコケを育て、そのコケが養分になって小さな草木を育て、やがて岩のくぼみに腐葉土がたまって、溶岩の上に大きな針葉樹の森が育ちました。
御嶽山登山道や原生林遊歩道を歩くと、森のなかを鮮やかな緑色のコケが覆い、幻想的な光景が広がります。また、ゴツゴツした溶岩の穴には、ヒカリゴケが妖しく光っている様子が見えます。
亜高山帯の森

多様性に富んだ日本の森

スイスアルプス、ロシアやカナダのタイガの森は、氷河期に大陸規模の巨大な氷河(氷床)に完全に飲み込まれてしまいました。ヨーロッパ大陸では、南へ逃れようとする植物が東西に延びるアルプス山脈に行く手を阻まれて、多くの種が絶滅しました。
氷河期が終わって再び森を形成したのは、過酷な環境に耐えられるマツ属やトウヒ属の限られた樹種のみでした。そのため、見渡す限り同じ種類の木が並ぶ、構造の単純な森が広がりました。

一方、氷河の影響が限定的であった日本列島の山岳地帯では、植物が絶滅を逃れる「避難所」が各地に存在し、多くの種類の樹木が共存する多様性に富んだ森が残されました。また、森の多様性は、樹木の足元にササやシダ、さまざまな固有種の草花が茂る林床の植生にも表れています。
氷河期を生き残った日本の山岳地帯は、世界的にも貴重な「生物多様性のホットスポット」です。
日本の多様性の森

御嶽山飛騨頂上の高山帯(標高2,800m)

御嶽山の登山道を歩くと、高度を上げるごとに針葉樹が低くなり、やがて森林限界のダケカンバ林を抜けると、高山帯の開放的な風景に変わります。
飛騨頂上までのハイマツの樹間にはキバナシャクナゲやコケモモなどの花が見られます。
飛騨頂上から三ノ池、四ノ池、五ノ池、継子岳にかけての御嶽山の北側は、緑豊かで高山植物のお花畑が広がり、ライチョウも多く見られる別天地です。
北御嶽
コマクサ
飛騨頂上から継子岳山頂にかけての砂礫地には、日本有数のコマクサ群落が広がります。
コマクサは「高山植物の女王」と呼ばれ、開花期は斜面がピンク色に染まります。
高山植物

氷河期の生き残り ライチョウ

御嶽山は国の特別天然記念物で絶滅心配種に指定されているライチョウの生息地です。日本には2,000羽程度が生息しているとされ、御嶽山での生息数は70羽程度と比較的個体数が安定しています。
標高2,500m以上のハイマツ帯や岩稜帯に縄張りをつくります。7~8月は子連れのライチョウが見られ、11月~4月は純白の冬毛に換毛します。

ライチョウは氷河期に南へ生息域を広げ、温暖化とともに日本中部の山岳地帯に逃げ込んで生き残りました。主にヨーロッパ、ロシア、カナダなど北方に生息するライチョウの仲間のうち、御嶽山は世界最南端の生息地のひとつ※だといわれています。地球温暖化によって分布域を喪失するおそれがあり、また、本来は高山帯にいないはずのキツネやカラスなどの外敵が脅威になっています。
※ライチョウの南限は、御嶽山と木曽山脈(中央アルス)・赤石山脈(南アルプス)を含む日本中部山岳地帯の南部。
雷鳥

熊に注意

御嶽山はツキノワグマの生息地です。入山には熊対策をしっかりしましょう。
熊に注意

御嶽山国定公園指定記念誌

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