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令和6年12月20日、下呂市議会から「市政の課題に対する提言書」を下呂市長に提出しました。
本年9月30日に、常任委員会ごとの市政に対する提案事項を下呂市議会より提出し、その後、10月から11月にかけて、常任委員会ごとに管外視察を行うなど、市政の課題に係る調査研究を継続し、その成果を提言としてまとめました。
提言書は、現在策定中の下呂市第三次総合計画の基本計画や実施計画等に反映いただくよう、市長に提出しました。
1.あさぎりサニーランド移転新築の早期実現を
昭和57年に新築されたあさぎりサニーランドは、築42年を経過し、雨漏りが多発するなど施設の老朽化は激しく、専用の休憩室が無いなど職員の働く環境も整っていません。また、現所在地は飛騨川浸水想定区域に指定されており、防災面でも大きな問題があり、平成30年、令和2年・3年の豪雨では、入所者の方々は指定避難所に避難されています。
市においても、移転新築の必要性は認識され、今年3月には「あさぎりサニーランド移転基本構想」を策定されましたが、120人ほどの入所者の方々やご家族に安心して生活していただき、下呂市の介護サービス等の基幹施設として引き続き大きな役割を担っていけるよう、以下のとおり提言します。
(1) 民間事業者の創意工夫等を最大限活用し、公共サービスの向上、地域経済の活性化及び財政負担の軽減(補助金活用)等を目的に、民間活力の活用を検討すること。
(2) 防災面、安全性を最大限留意した設計とすること。また、施設へのアクセスもよく考え道路整備等もあわせて検討すること。
(3) 新施設については、木のぬくもりを感じる木造とし、今後予測される高齢者の減少時に、用途転換が容易な分棟型での設計を検討すること。また、建築家を含め市内外から幅広く提案を募ること。
(4) 新施設は、ヒートショックや熱中症のリスクなどを削減し、快適かつ健康的に暮らせるよう、断熱等性能5等級以上とし、熱損失を最小限に抑え、エネルギー消費が少なく、冷暖房費の削減に配慮した設計とすること。
(5) 中核福祉施設と位置付け、市内各施設との連携ができるよう取り組むこと。
2.猛暑から市民を守るために
令和6年4月から熱中症特別警戒アラートの運用が始まりました。自助による熱中症予防行動を原則としながらも、共助や公助として最大限の予防行動が実践できるよう、自治体による支援も求められています。乳幼児から高齢者までの市民を猛暑から守るため、以下のとおり提言します。
(1) 地域の集会施設等をクーリングシェルターとして活用し、併せてエアコン等の整備や電気代を含む施設の維持・管理費に係る補助等制度を創設すること。
(2) 小学生の帰宅時間帯は気温が高い時間帯と重なるため、徒歩通学を懸念する保護者の声も多い。バス通学運用の見直しや日傘の活用推進など、子どもたちの命を守る取り組みを実施すること。
(3) 公園や子育て支援センターなどの施設においても、これまで以上に暑さ対策に配慮し、市民にとってより魅力的な施設となるよう運用面も含めた環境整備を進めること。
3.市民の生活の足となる公共交通の確保・充実に向けて
過疎化や少子高齢化等により、従来の公共交通の維持が困難となっています。子どもや高齢者を含め、市民誰もが暮らしやすい下呂市の実現のため、以下のとおり提言します。
(1) 既存デマンドバスの検証、再編を行い、世代間格差是正に向けた高等学校等通学費補助制度の拡充や福祉パスポートの見直しを行うこと。
(2) 市内全体で、公平で利用しやすい補助制度を整備し、全ての市民が気軽に公共交通を利用できる環境を実現すること。
(3) 高齢者や免許を持たない市民が安心して移動できるよう、地域の絆を活かした非営利ライドシェアの導入検討を進め、「下呂市地域公共交通網形成計画」に盛り込み、具体的な施策を推進すること。
(4) 子どもの送迎を担う保護者や、高齢者を介助する家族の負担軽減に配慮した施策を進めること。
(5) 公共交通の利用促進を図るため、利用者目線の便利でわかりやすい情報発信に努めること。
1.防災・減災対策のさらなる強化に向けて ~能登半島地震を受けて~
世界的な気候変動による気温の異常な上昇、昭和から平成時代とは比較にならない集中豪雨、頻発する地震等、市民の日々の暮らしは迫りくる自然災害に常に脅かされています。
今年元日に発生した能登半島地震では、道路が寸断されたため多くの集落が孤立し、災害救護班の到着まで非常に時間を要する結果となりました。下呂市から元日に救援に向かった部隊が到着したのが4日の昼であったという具体的な例もあります。孤立した地域の住民は、救援部隊が到着するまで、自分たちだけの力で生き延びていかねばなりません。
阿寺断層の真上に位置する下呂市も地震災害は決して他人事ではなく、災害の発生状況も地形上、似たような状況に陥ることは十分推測できます。そのためにも私たち市民は、彼の地で起こったことからしっかりと学び、平常から自助・共助を意識し、来るべき災害に備える必要があると考えます。
このような観点から以下について提言します。
(1) 市民の自助・共助に対する意識改革を進めること。
・具体的なガイドラインの策定(自主防災組織による救助作業・避難所運営等)
例)倒木で道路が寸断された場合の地域の林業従事者・経験者の関わり方
例)タイヤショベルを所有している農家の災害時の関わり方
・防災訓練の抜本的な見直し(自助・共助意識を喚起させる訓練の提案)
(2) 建設機械リース会社との災害支援協定を締結すること。
(3) 被災地に派遣された職員の報告を基に有事の際、有効に救援部隊が機能できるよう受入れ体制の見直しを早急に行うこと。
・指揮所の設置場所、宿泊施設の確保等
(4) 安定したライフラインの確立に向けた整備と備蓄のさらなる拡充を行うこと。
・指定避難所における発電機、空調設備の整備
・快適な居住スペース、トイレの確保等
(5) 職員の初動対応方法について確認を行うこと。
・本庁、各振興事務所の体制の再確認
・避難所開設・市民向け広報等の具体的な手順の見直し
・観光立市の観点から、観光客の安全確保に対する基本事項について各観光協会を始め、関係団体との協議を深めておくこと
(6) 中央官庁の関係部署との良好な関係を構築しておくこと。
・市長の要望活動の折に関係部署も訪問していただく
・職員の個人的なつながりを利用し関係を深める
2.農地保全が末永くなされていくために
少子高齢化の進む当市は、農業従事者も極端に少なく、ほんの2%程度の人数で広大な農地を守っています。さらにその少ない従事者も高齢化が進み、本来であれば親から子へ、子から孫へと継承されていくはずの農地が、都市部への人口流出、生活様式の変化等の時代の流れにのまれ、耕作放棄地と名を変えており、同時に本来であれば、年間の農作業の中でそれぞれの農家の手によって適切に管理されてきた農道、畦畔、用排水路等も同様に荒廃し景観を損ねています。
一方でこのような状況に歯止めをかけようと、各地域で農地を引き受ける担い手や、農地を集積して集落営農を立ち上げ守っていこうとする動きも出てきています。
しかしながら、この担い手と呼ばれる方々、また集落営農組織においても深刻な後継者不足や肥料・燃料等の値上げによる生産コストの増大、定期的な耕作機械の更新に係る莫大な費用等、課題が山積しています。まさに現在は農地の存続以前に、それを守ろうとしている組織自体の存続が危ぶまれる危機的状況と言えます。
このような中にあって、行政としてもっと積極的にこの問題に関わり持続可能な農地保全に向けて、しっかりとした施策を打ち出していく必要があると考え、以下について提言します。
(1) 行政が中心となって、現状把握すべく農家・畜産農家へのアンケートを実施し、その結果を踏まえ、集落営農組織・担い手・個人農 家・畜産農家等を含む協議会を立ち上げ、意見交換や事例紹介、経営相談等を実施し、活性化を図ること。
(2) 担い手・集落営農組織、小規模農家および環境保全を目的とした地域活動に対する市独自の支援事業を創設すること。
(3) 国庫および県単土地改良事業補助金交付要綱の基準を満たさない小規模な団地における圃場整備を対象とする市独自の補助制度を創設すること。